「インサイドヘッドを見たけど、つまらなかった」
「インサイドヘッドを見ていたら、イライラした」
このように感じる人がいるようです。
「インサイドヘッド」と言えば、2015年に公開されたピクサーの3DCGアニメ作品。
第88回アカデミー賞をはじめに、30種類近い権威のある賞を受賞しています。
観客の反応も「感動した」「人生観が変わった」といった好意的な感想が大半です。
が、一方で、「いやいや、ダメだった」という人もいます。
一体どういうことなのか?
なぜ、楽しめない人がいるのか?
心理士の私が、心理学的に「つまらない」「イライラする」という理由を解説してみます。
私は「インサイドヘッド」がそこそこ面白かったと感じたのですが、友人は「つまらなかった」といっていました。
批判する気持ちも、分からないでもありません。
「インサイドヘッド」自体が心理学やをベースに製作された作品ですので、ある種の作品解説や考察をしながら、「作品をつまらないと感じる理由」について書いてみます。
〜もくじ〜
インサイドヘッドがつまらない?イライラする?
さて、世間的には好評のインサイドヘッドですが、もちろん嫌っている人もいます。
ネットでも、否定的なレビューも書き込まれていますね。
小さな子供には少し理解しにくいと思う
人間が実際に成長過程で身につける物で経験しないとわからない。
だが、それを無理やり小さい子向けにしているので、大人が見ると幼稚すぎて見える。
期待してたただけに、ガッカリ感が・・・
個人的には、さほど面白くはなかったです。
面白くない。
私の感覚がずれているのか?
なぜなのでしょうか?
考察してみましょう。
「つまらない」や「面白い」は自分が原因
まず、前提としてお伝えしたいのは、「つまらない」「イライラする」「嫌いだ」と感じるのは、自分に原因があることです。
「インサイドヘッドがつまらない!」というと、インサイドヘッドに問題があるようですね。
が、実際のところ、「面白い」も「つまらない」も、自分側の心の中で発生している感情です。
もちろん、観客は「インサイドヘッドがつまらなかった」と思っていいのです。
無理に面白がる必要は全くありません。
自分の感情を大切にしていいのです。
いくらでもストーリーやキャラクターを嫌っていいです。
人の迷惑にならない範囲で、叩いたり、批判・批評するのもかまいません。
表現の自由があります。好き勝手にやりましょう。
ただ、「見て、不快な感情を生み出したのは自分自身だ」ということも、真実です。
これは、まさに「インサイドヘッド」の作品の設定によく似ています。
「インサイドヘッド」では、主人公ライリーの頭の中にヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミというキャラクターがいますよね?
私たち「インサイドヘッド」を見た人の頭の中でも、似たように「ヨロコビ」や「イカリ」や「ムカムカ」が動き回っているということです。
つまらない・イライラするとは?
では、そもそも「つまらない」「イライラする」とは何なのか考えてみます。
認知心理学的に、「つまらない」「イライラ」とは、以下のようなときに感じるとされます。
[aside normal”]「つまらない」の発生条件
・内容が、すでに知っているようなことだった
・知らない内容だったが、価値観と合わなくて、好意的な感情が生まれなかった[/aside]
[aside normal”]「イライラ」の発生条件
・内容が価値観と合わなくて、問題をたくさん発見してしまい、解決しなければいけないと感じる[/aside]
例えば、すでに知っているニュースをもう一回聞いた場合、「つまらない」と感じます。
知らないニュースでも「だからどうなの?」と思えば、「つまらない」ですね。
また、「これは問題だ!変えなければ!」と感じてしまうと、楽しむどころではありません。
「イライラ」が発生してきます。
では、具体的に「インサイドヘッド」に照らし合わせて考えてみましょう。
つまらない理由を心理学で解説
インサイドヘッドがつまらない要因は、以下のようなパターンが考えられます。
A「知ってるテーマだから、つまらない」
「インサイドヘッド」のテーマは、簡単に言えば「どんな感情にも役割がある」というものですよね。
「カナシミやイカリ、ムカムカも大事なものなんだ」と。
それに対して感動できないと「つまらない」と感じるでしょう。
「『悲しみも大事』って、そんなこと当たり前じゃん?」と思ってしまうと、楽しめない可能性があります。
これは、視聴者の知識や経験の量や質が原因ですね。
「知っていても、再認識できて面白かった」という場合もあるのですが、当たり前すぎたり、新鮮さがないとつまらなくて当然です。
こういう人が「つまらない」と感じたのは、正常な反応です。
B「好意的な感情にならなかったから、つまらない」
別のパターンとしては、「好意的な感情にならなかった」という場合があります。
例えば「いや、自分は悲しみに役割があるなんて考えは、嫌いだ」「できればポジティブな感情ばかりを感じたい」と思う人。
「ネガティブ感情も大事」という映画のテーマそのものが合わないので、楽しめないという人です。
この反応も正常ですね。
ただし、「ポジティブなものだけ」を追う姿勢は、心理学的にもちょっと危険です。
「インサイドヘッド」の作中でヨロコビがポジティブばかりを追いかけて失敗したのと同じように、私たちもネガティブさを受入れないと苦しむ可能性が高まります。
ガブリエル・エッティンゲンという心理学者の研究で、ポジティブばかりを追いかけると、逆にうつになるとも分かっています。
「インサイドヘッド」自体を嫌うのは自由ですが、「インサイドヘッド」のテーマは受入れた方が健康的でいられるでしょう。
イライラする理由も考察
さて、続いて「イライラする」理由も考えてみます。
一言で言えば「価値観と違う! 問題がたくさんある! 解決しなければ!」と感じると、人間はイライラします。
それを細かくわけると、以下のようなパターンが考えられます。
A「キャラクター求めるものと違って、イライラする」
「映画のキャラクターは、ヒーローのようであって欲しい」
「かっこよくて理想的なキャラクターの活躍が見たい」
こういった価値観を持っていると、「インサイドヘッド」にイライラするでしょう。
インサイドヘッドのライリー、メグ、パパ、ママや先生たちは、カッコイイ行動はしません。
また、ヨロコビやカナシミをはじめとする感情たちも、失敗が多いです。
ネットのレビューなどを見ていると、「インサイドヘッド」を楽しめる人は「映画は学びを得るもの」などと思っている人が多いようです。
一方で、楽しめなかった人は「ヒーローの活躍が見たい」と思ったのに、期待と違ってガッカリした人が多いようです。
どちらが正しいわけでもないですが、求めるものと違うと、人間はイライラします。
B「映画に求めるものと違う」
別のパターンとしては、映画そのものへ求めているものの違いです。
「ピクサー映画は子供が楽しめなければ」「大人も楽しめるものでなければ」「深いテーマがなければ」「矛盾のないものでなければ」「理想的な家族が描かれなければ」といった価値観を持っていると、欠点に気づいたときにイライラします。
どんな価値観を持つのも自由なのですが、「こうあるべき」という基準が高いとその度にイライラが出てきます。
映画に限らず苦しい生活になるので「どちらでもいいか」という幅もあるといいでしょう。
C「この映画は悪影響があるのではないか!」
その他のパターンとしては「この映画は悪影響があるのではないか!」と思ってイライラする人もいるでしょう。
これは、少し視点が大人なパターン。
「この映画のテーマは伝えるべきではない」「この映画はピクサーの評判を落とすのでは」「この映画を見たら、子供は退屈するのでは」などと、問題を感じる場合です。
問題を発見すると、人は「解決しなければ!」と思います。
問題をたくさん見つけた時人は「イライラ」を感じるのですね。
これも正常な反応で、おかしくはありません。
だからこそ、「本当に『問題がある映画』なのか?」と冷静に考えなおしてみると、イライラはおさまるかも知れません。
不快な感情も自分からのサイン
さて、「つまらない」と「イライラ」の原理について書いてきました。
その上でお伝えしたいのは「そのあなたの感情にも意味がある」ということです。
感情は自分が作っている、自分へのサインです。
「子供には、もっと楽しませられる映画を見せてあげたい」とか「魅力的なヒーローの物語を見たい」とか、そういった気持が根源にあって発生しているのです。
だから、つまらなさやイライラも肯定していいのです。
残念ながら(?)まさに「インサイドヘッド」の内容と同じですね。
インサイドヘッド まとめ
ということで、インサイドヘッドについてでした。
・「名作」「感動した」という声も多いインサイドヘッド
・一方で「つまらない」「イライラする」という感想もある
・心理学的に解説すると、つまらなさやイライラの原因は自分
・つまらないのは理由は、「知っている内容」「好意を感じない内容」と感じたから
・イライラする理由は「キャラに求めるものと違う」「映画に求めるものと違う」「悪影響がある」など
・不快な感情も、自分自身からの一種のサイン
ということですね。